Petit Bonheur ‐名も無き宝石店‐
プロローグ
ここは、宝石店です。
ただし、店内に宝石はありません。
だけど、この宝石店を訪れ帰っていく人たちは
幸せそうに笑うのです。
少し私の店を紹介しましょうか。
私の大事な宝石店は、ある場所のある路地裏にあります。
壁は煉瓦でできていて、扉は木の板でできています。
その扉には、openと書かれた板が下げられています。
clauseになった事はまだ一度もありません。
店に入ると、すぐ目に付くのはやはり
溢れるばかりの物の数でしょう。
腕時計や携帯ストラップ、ミサンガから洋服まで
いろいろな物があります。
品物かって?
いいえ。全て私の大事な宝物です。
決して誰にも譲れません。
そして、白熱電球の真下にあるのが
ロッキングチェアです。
愛読中の本を読みながら
ロッキングチェアに揺られて
私はお客様を待つのです。
あなたは今幸せですか。
悲しみに追われてはいませんか。
辛い時は笑えば良いなんて、
そんな安い言葉に騙されてはいませんか。
泣きたい時は、思いっきり泣いてください。
叫んでください。
それでも心に闇が出来るのならば…
どうぞ、私の宝石店に起こし下さい。
すべての悲しみが、小さな幸せに変わるのならば
私にとってそれほど嬉しい事はありません。
私はいつでもロッキングチェアに揺られ
あなたが来るのを待っています。
コンコンコン
ふふ。
お客様が来たようです。