Petit Bonheur ‐名も無き宝石店‐
校舎裏の花壇は、三畳くらいで
その中には放置され乾ききった堆肥が投げ込まれている。
さあ始めようと、自分に気合を入れて
花壇の土に水分を含ませている。
家にも一回り小さい花壇があり、よく母の手伝いをしているから
こういうのは得意だ。
慣れた手つきで順調に作業を進めていき、
遂には、一輪車に乗っている花の鉢を植えるだけになった。
一休みしようと、隅に置いていたタオルで額の汗を拭い、
花壇の縁の煉瓦に腰を下ろした。
かなり疲れていたけど、こんなに体を動かしたの久々だった。
楽しいって思ったのも久々だった。
汗をもう一度拭い、続きをしようと思って立ちあがった。
その時だった。
「あれ…?篠谷じゃん。何やってんの?」
後ろから聞こえた声に振り向くと、
テニスボールを片手に持った、菅田陽平が不思議そうに
こっちを見て立っていた。