【超短編】わたしの大嫌いなお兄ちゃん
お兄ちゃんの生徒手帳
***

そんなお兄ちゃんは明日っから修学旅行で一週間家を空けます。

目の上のたんこぶから一週間も開放されるなんて、なんって素晴らしいの。



お風呂はゆっくり入れるし
Wii もやりたい放題
テレビだってわざわざ録画しなくてもいいんだわ。
ハーゲンダッツが盗まれることに怯えることがないのね。



いっそのこと1年くらい行ってしまえばいいのに。
しかし、当の本人はあまり気乗りしないらしく、

「一週間も練習サボったら体が鈍っちまうよ」

なんてボヤいてるんです。



ちょっと鈍らせて来たらいいのよ。





ふふふんふふふんふっふっふ~ん♪

明日からのパラダイスが楽しみすぎて、わたしはご機嫌で鼻歌まじりに机に向かいました。

今日は宿題がはかどりそうです。



さって、やるぞ~!!

っと思ったら



部屋のドアが開いて顔を出したのはお兄ちゃん。



「おい、俺の生徒手帳見なかった?」


「わたしはおいって名前じゃありません」


「相変わらず可愛くねぇな」


「そりゃ失礼しました」


「で?生徒手帳みた?」


「知らな~い」


「ちっ……」


バタンと乱暴にドアを閉めて出て行ったお兄ちゃん。


なにあれ?感じワル~。
わたしは気を取り直して机に向かいました。



でも、なんだか頭がおも~い。


お兄ちゃんが邪魔するから。
ちょっと水でも飲もう。



わたしはリビングの冷蔵庫からミネラルウォーターを一本取り出して蓋に手を掛けたところで、電話機のおいてある小棚に放ってあるお兄ちゃんの生徒手帳を見つけました。

なんだよ、ちゃんと探せよバカだなぁ。

どっちがガサツなんだか。


わたしはお兄ちゃんに届けてやろうとそれを手にとりました。

するとその隙間から一枚の写真がパラリと落ちました。



「ん?写真?」



拾い上げると、




「これ……わたし?えーっと……なんでお兄ちゃんの生徒手帳にわたしの写真が?」




……これって…えー?急に顔が熱くなってきちゃった。



「どうした?」



「ひっひゃぁあ!?お、お兄ちゃん?!」



わたしはとっさに自分の写った写真を後ろに隠してしまいました。

「なんだよ、変な声だして」

「へ?ななななんでもないよ?!あはは…あ、お兄ちゃんコレ、生徒手帳!」

「!!――あ、さんきゅ」


お兄ちゃんはパッとわたしの手から手帳を奪ってサッサといってしまいました。

なんなのよもー。




……なんでわたしの写真持ってんの?




わたしは隠していた自分の写真を見る。
よく写ってるなコレ。



その日わたしはなんだか体が熱くなってうまく寝付けませんでした。

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