ちよちよみちよ
「みちよに? それでキャバクラ?」
僕が思うに、千代の家も母子家庭だから、その諸々の難しい事情も絡んでいるんだろう。僕だって公立の大学へ行ける様な頭はないし、私立へ行くほどの余裕ももちろんないしで、地味に公務員養成の専門学校へ行くつもりだ。
早くに旦那を亡くした母親のみちよを困らせるつもりはないし、それを犠牲にしてまで掴みたいような夢もない。千代をお嫁さんにもらうのに学歴はいらない訳だし。
「お前のおかん、綺麗だもんな。あれで40には見えないよ」
「いやいやいや、宏樹、みちよの素っぴん見たことないっしょ」
「みちよさんの素っぴんか、何かエロいな」
エロいのは君だ、サワヤカボーイ。漆黒のサラサラヘアーが眩しいよ。
みちよが同級生にちやほやされるのは、そんなに嫌じゃない。確かにあの人は若作りがうまいし、商売柄人当たりもすごくいい。
ただ、酔って部屋に帰って来た時のみちよは酷い。何がって、もう何もかもが酷い。あれを見たら千代だって憧れるのをやめるかもしれない。
ところで何でキャバクラなんだ?
みちよに憧れてるなら『スナックみちよ』と書けばいいじゃないか。