話し屋 (短編集)
あれから、私は悠矢先輩が用事のない日以外、毎日音楽室へ通った。



それほど悠矢先輩の音が好きだったのだ。




「先輩!!また、あの題名のない曲弾いて!!」



「いいよ。」



そういうと悠矢先輩は静かにその曲を弾き始めた。



今日この曲を弾いている悠矢先輩を見て初めて気付いた。


この曲は恋の曲だ。



悠矢先輩の恋の曲なんだ。



悠矢先輩の弾いている姿があまりにもせつなくて、優しい表情なのになぜかせつなくて、私までもせつなくなってしまった。



「わっ!何で、泣いてるの??」



「えっ?」


私は自分でも気付かない内に泣いていたようだ。
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