話し屋 (短編集)
「・・この曲さ、ちゃんと題名考えてみようと思う。やっぱり自分で、初めて作った曲だから大切にしないとな。綾瀬、ありがとう。」



と優しく笑った。



こんな優しい先輩の笑顔が私は好きだ。



「何か、失恋で、初めて俺すごく情けない奴って分かったよ。それが分かっただけでも失恋して良かったかな。一歩成長したって事で。」


先輩の今の表情はキラキラしていて綺麗だった。



失恋した女は綺麗だって言うけど、男もかもしれない。



「さて、どんな題名がいいかなぁ~。」



とさっそく題名について考える。



「失恋なんてどうですか??」




と私がふざけて言う。



「うわっ!そのままじゃん・・。弾くたびに落ち込みそう。しかもこの曲そんなイメージで作ったわけじゃないし。」



と先輩はいじける。


「う~ん。まあいいじゃないですか。ゆっくり弾きながら考えましょう。」



「そうだな。そういえばさ、」



「何ですか??」



「明日も音楽室に来る??」



「もちろんです!!」



こうして私はまた放課後の音楽室に向かう。



あの題名のない曲はいつ題名がつくかは不明だが、私はあの曲が好きだ。



そして、先輩と過ごす、あの放課後の音楽室も好きだ。



             君の奏でる音  end



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