話し屋 (短編集)
「えっ・・私、やってない!!!なんで私を疑うの??」



「昨日の3限の音楽の時間が終わった後に財布がなくなったのは知ってるわよね??」


「うん。知ってるけど・・。」


「あなたは、忘れ物があるといって教室にいったん戻った。だから、最後に教室を出た月
島さん、あなたが財布を盗んだとしか考えられないの。」


「そんな横暴な・・・!!とにかく私はやってない!!」


「・・・あなたが謝れば問題が解決するの!!お願いだから認めてっ!!」


「違う、私じゃない!!香月さん、もしかして早く盗難事件を解決したいがために私を無理やり犯人役にしようとしていない??」


まさにその言葉は図星だった。クラスでの存在が無に等しいこの子のせいにすればクラス
に何のわだかまりもなく事が収まるから。だから、私は彼女のせいにしようとしたのだ。


パンッ!!


頬に鈍い痛みが走る。一瞬、今の現状が掴めずボーっとしてしまったが、その頬の痛みは私が、月島沙羅に叩かれた痛みだと分かった。
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