話し屋 (短編集)
いつまでもふさぎ込んでいては駄目という事で私は旦那の部屋を少し片付ける事にした。



「あら、雅彦さんったらこんな昔の物まで残していてくれたのね。」



と私は微笑む。



雅彦さんとはもちろん私の旦那の事だ。




雅彦さんが残しておいてくれたのは付き合って初めて誕生日のときに渡した手袋。



その手袋はだいぶ使い込んでいるのが一目で分かるくらいボロボロだった。



「あっ!これは、新婚旅行に行った時の写真・・・私達もこんな時があったのね。」



なんて色々なものを整理していると、昌子へと綺麗な字で書かれたまだ真新しい茶封筒を見つけた。



「何かしら??」



と言いつつ茶封筒をあけてみる。



その中身は手紙とも呼べる雅彦の遺書だった。
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