主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
息吹が屋敷を飛び出して行ってからいらいらしっぱなしでほとんど眠れなかった主さまは、百鬼夜行に出る前に息吹を迎えに晴明の屋敷を訪れた。
…が、肝心の息吹の姿は自室になく、しかも晴明も居ない。
訝しんだ主さまが晴明の仕事部屋で考えを巡らせていると、どこからか息吹の明るい声が聴こえた。
「気持ちよかったー。父様またお背中流してあげるね」
「ああ、楽しみにしているよ。…おや、迎えが来たようだよ」
「あ、主さま」
――なんということか、主さまは我が目を疑った。
息吹と晴明が出て来た場所は、風呂場からだったからだ。
「…何をしていた」
「風呂に入ったに決まっている。見てわからぬのか?」
「…誰と誰がだ?」
「私と息吹だ。親子で風呂に入って何が悪い?」
悪びれもせず当然のことのように言ってのけた晴明は濡れた息吹の髪を拭いてやりつつ、また息吹も全く恥ずかしがった素振りもなくきょとんとした顔で主さまを見つめていた。
「主さま怒ってるの?どうして?」
「…俺とお前が一緒に風呂に入ったのはいつのことだ?」
「え!?えっと……1か月位前…かな…」
明らかにぴりっとした主さまに気付いた息吹は晴明の手を離れて主さまの前に立つと、濃緑の着物の袖を引っ張って眉を八のへにして謝った。
「ごめんね、父様と一緒に入っちゃ駄目だった?」
「…別に関係ない。…袖を引っ張るな。離れろ」
「やだ。主さまこれから百鬼夜行なんでしょ?だったら私…今日はここに泊まってもいい?もうちょっと父様と一緒に居たいの。お願い」
「嬉しいことを言ってくれる。どうだ十六夜、息吹を私に預けてみぬか」
即答で“駄目だ”と言いそうになったが、むっとしたままの主さまは、湯上りで桜色に染まった頬と潤んだ瞳で息吹から見つめられて胸が高鳴り、息吹の手を振り払いつつ縁側にどすんと座った。
「勝手にしろ」
「迎えに来てくれたのにごめんね主さま。じゃあまた朝迎えに来てくれる?」
「…わかった」
晴明がこれ見よがしに息吹の肩を抱いて笑いかけたことも腹立たしかったが、もそっと近づいて来た息吹が腕に抱き着いてくると、いやでも口許が緩んでしまって晴明から失笑された。
「そなたは簡単な男だな」
「…うるさい」
庭に降りた晴明に聴かれないように息吹の耳を軽く引っ張った主さまは、お返しと言わんばかりにわざと声色を下げた低い声で耳元で囁いた。
「…俺の屋敷に戻ったら、俺と一緒に風呂に入れ。約束だからな」
「え…っ!?…う、うん…」
主さま、密かに握り拳を作って嬉しさ爆発。
…が、肝心の息吹の姿は自室になく、しかも晴明も居ない。
訝しんだ主さまが晴明の仕事部屋で考えを巡らせていると、どこからか息吹の明るい声が聴こえた。
「気持ちよかったー。父様またお背中流してあげるね」
「ああ、楽しみにしているよ。…おや、迎えが来たようだよ」
「あ、主さま」
――なんということか、主さまは我が目を疑った。
息吹と晴明が出て来た場所は、風呂場からだったからだ。
「…何をしていた」
「風呂に入ったに決まっている。見てわからぬのか?」
「…誰と誰がだ?」
「私と息吹だ。親子で風呂に入って何が悪い?」
悪びれもせず当然のことのように言ってのけた晴明は濡れた息吹の髪を拭いてやりつつ、また息吹も全く恥ずかしがった素振りもなくきょとんとした顔で主さまを見つめていた。
「主さま怒ってるの?どうして?」
「…俺とお前が一緒に風呂に入ったのはいつのことだ?」
「え!?えっと……1か月位前…かな…」
明らかにぴりっとした主さまに気付いた息吹は晴明の手を離れて主さまの前に立つと、濃緑の着物の袖を引っ張って眉を八のへにして謝った。
「ごめんね、父様と一緒に入っちゃ駄目だった?」
「…別に関係ない。…袖を引っ張るな。離れろ」
「やだ。主さまこれから百鬼夜行なんでしょ?だったら私…今日はここに泊まってもいい?もうちょっと父様と一緒に居たいの。お願い」
「嬉しいことを言ってくれる。どうだ十六夜、息吹を私に預けてみぬか」
即答で“駄目だ”と言いそうになったが、むっとしたままの主さまは、湯上りで桜色に染まった頬と潤んだ瞳で息吹から見つめられて胸が高鳴り、息吹の手を振り払いつつ縁側にどすんと座った。
「勝手にしろ」
「迎えに来てくれたのにごめんね主さま。じゃあまた朝迎えに来てくれる?」
「…わかった」
晴明がこれ見よがしに息吹の肩を抱いて笑いかけたことも腹立たしかったが、もそっと近づいて来た息吹が腕に抱き着いてくると、いやでも口許が緩んでしまって晴明から失笑された。
「そなたは簡単な男だな」
「…うるさい」
庭に降りた晴明に聴かれないように息吹の耳を軽く引っ張った主さまは、お返しと言わんばかりにわざと声色を下げた低い声で耳元で囁いた。
「…俺の屋敷に戻ったら、俺と一緒に風呂に入れ。約束だからな」
「え…っ!?…う、うん…」
主さま、密かに握り拳を作って嬉しさ爆発。