主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
主さまが百鬼夜行から帰ってくるのを毎日起きて待っていられたのは…3日間だけだった。
本当はもっと頑張れるのに、ふらふらしながら出迎えるとものすごく怒られて、“無理をするな”と呆れ顔で言われてしまってきゅんとしたのは内緒。
「……よいしょ」
明け方主さまが戻って来て、夫婦になってから主さまの部屋で暮らすようになった息吹は隣で眠っている主さまを起こさないようにそっと身体を起こした。
「…どこへ行く」
「あ、起こしちゃった?あ、あの…しーしーだよ」
「…嘘をつけ。…また雪男の所か。復活するにはまだ時間がかかる。ここに居ろ」
腕を掴まれてまた布団の中に引きずり込まれかけたが脚を突っ張ってなんとか抵抗し、薄目で睨んでくる主さまに手を振って羽織を手に部屋を出た息吹は庭に降りて、赤い花を一輪摘んで香りを楽しんだ。
「これ本当に綺麗で素敵な香り。薔薇って言ってたっけ…」
水を張った器に薔薇を浸して地下室の雪男の元へと行った息吹は、この薔薇を凍らせて氷中花を主さまと一緒に楽しもうと思っていた。
そして懐の中には、『雪ちゃん観察日記』は欠かさず忍ばせていた。
「毎日変化はないけど…一体いつになったら雪ちゃん戻って来てくれるんだろ。雪ちゃーん、今日も来た………、雪ちゃん!?」
――氷でできた重たい戸を開けて中へ入ると、昨日は何ら変化のなかった氷の塊は…息吹の両手の掌大になっていて、口があんぐり開いたまま塞がらなくなった息吹は器を寝台の上に置いて身を翻すと、転びそうな勢いで階段を駆け上がった。
「主さま!主さま大変っ!大変大変大変っ!」
「…息吹!?どうした!?」
あまりの動転ぶりに驚いた主さまが部屋から出て来ると、息吹は主さまの背中をぐいぐい押して無理矢理階段を下らせた。
「雪ちゃんが大変なの!おっきくなっちゃった!」
「…はあ?」
半信半疑で眠たげな声を上げた主さまを雪男の部屋に連れ込んだ息吹は、確かに氷の塊が大きくなっているのを主さまに見せると腰に抱き着いて喜びを爆発させた。
「きっと雪ちゃんもうすぐ帰って来るよ!どうしよう主さまっ、すっごく嬉しい!」
「……ちっ」
…あきらかに舌打ちをした主さまの顔を見上げた息吹は頬を膨らませて寝台に駆け寄ると、大きくなった核を覗き込んで笑いかけた。
「雪ちゃん、もうすぐなんでしょ?私のことわかる?」
「…わかるものか」
主さまは嫉妬してそう呟いたが…それに反応するように、青白い核がぴかっと光った。
「!雪ちゃん!今絶対“わかる”って言った!」
…久々の焦りを覚えた主さまはまた舌打ちをしつつ、はにかんだ。
本当はもっと頑張れるのに、ふらふらしながら出迎えるとものすごく怒られて、“無理をするな”と呆れ顔で言われてしまってきゅんとしたのは内緒。
「……よいしょ」
明け方主さまが戻って来て、夫婦になってから主さまの部屋で暮らすようになった息吹は隣で眠っている主さまを起こさないようにそっと身体を起こした。
「…どこへ行く」
「あ、起こしちゃった?あ、あの…しーしーだよ」
「…嘘をつけ。…また雪男の所か。復活するにはまだ時間がかかる。ここに居ろ」
腕を掴まれてまた布団の中に引きずり込まれかけたが脚を突っ張ってなんとか抵抗し、薄目で睨んでくる主さまに手を振って羽織を手に部屋を出た息吹は庭に降りて、赤い花を一輪摘んで香りを楽しんだ。
「これ本当に綺麗で素敵な香り。薔薇って言ってたっけ…」
水を張った器に薔薇を浸して地下室の雪男の元へと行った息吹は、この薔薇を凍らせて氷中花を主さまと一緒に楽しもうと思っていた。
そして懐の中には、『雪ちゃん観察日記』は欠かさず忍ばせていた。
「毎日変化はないけど…一体いつになったら雪ちゃん戻って来てくれるんだろ。雪ちゃーん、今日も来た………、雪ちゃん!?」
――氷でできた重たい戸を開けて中へ入ると、昨日は何ら変化のなかった氷の塊は…息吹の両手の掌大になっていて、口があんぐり開いたまま塞がらなくなった息吹は器を寝台の上に置いて身を翻すと、転びそうな勢いで階段を駆け上がった。
「主さま!主さま大変っ!大変大変大変っ!」
「…息吹!?どうした!?」
あまりの動転ぶりに驚いた主さまが部屋から出て来ると、息吹は主さまの背中をぐいぐい押して無理矢理階段を下らせた。
「雪ちゃんが大変なの!おっきくなっちゃった!」
「…はあ?」
半信半疑で眠たげな声を上げた主さまを雪男の部屋に連れ込んだ息吹は、確かに氷の塊が大きくなっているのを主さまに見せると腰に抱き着いて喜びを爆発させた。
「きっと雪ちゃんもうすぐ帰って来るよ!どうしよう主さまっ、すっごく嬉しい!」
「……ちっ」
…あきらかに舌打ちをした主さまの顔を見上げた息吹は頬を膨らませて寝台に駆け寄ると、大きくなった核を覗き込んで笑いかけた。
「雪ちゃん、もうすぐなんでしょ?私のことわかる?」
「…わかるものか」
主さまは嫉妬してそう呟いたが…それに反応するように、青白い核がぴかっと光った。
「!雪ちゃん!今絶対“わかる”って言った!」
…久々の焦りを覚えた主さまはまた舌打ちをしつつ、はにかんだ。