主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
毎日毎日、ここ一週間毎日文は届いていた。

ただし晴明は、目を通すが返事は書かず、この問題を敢えて放置していた。


主さまたちにはもう関わらせないーー

息吹を一目見た時に感じた“何か”が晴明にそう決断させて、突き動かしたのだ。


「息吹、私は多忙故客人も来たりする。そういう時は式神たちと遊びなさい」


「はい」


人型に切り取った紙に何かを唱えて息を吹きかけると、紙は童女の姿となって晴明に頭を下げる。


不思議なことに慣れ過ぎていた息吹はそれを驚かなかったが、世間から言わせれば十分奇怪な術だ。

素直で聞き分けのいい息吹だが、それでも晴明を煩わせる。

何が好きなのか、何が嫌いなのか、何をすれば喜ぶのか、何をしたら嫌がるかーー


人の意を汲んで先回りするのは得意だが、それは子供には通用しない。


「晴明しゃま」


「ん、なんだい?」


「独りで寝るのは嫌だから、今日から一緒に寝て下さい」


「寂しい、と?」



「だって……」


“幽玄町ではいつも誰かが側にいてくれたから”


息吹の口から実際にはその言葉は出なかったにしろ、顔は如実に物語っている。


「いいとも、そなたの側にいてやろう」


「わあ、よかった!」


ようやく子供らしい笑顔が溢れた。


胸を何かにくすぐられたような気分になった晴明は、頬をかきながら巻物を広げて、式神とままごとをする息吹の側で読書に勤しんだ。

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