主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
「晴明殿…あ、あの童女も式神なのですかな?」
「ああ…あの童女は私の養女となる予定の娘。何か興味でも?」
水盤の上で掌をかざしていた晴明が、何故か冷や汗をかいている客人にちらりと視線を走らせる。
烏帽子を膝に乗せた客人は、庭で花の種を蒔いている童女…息吹に目を丸くした。
「では…あの童女は人で?」
「いかにも。人ではないものを私が養女に迎えるわけがない」
…と言いつつも、晴明が数年ーー十数年経っても歳を取っていない理由をまた彼ら訳ありの客人は知っていた。
「てっきり妖かと…」
「あの娘の話はよして頂きたい。よろしいか」
少し声色を下げた晴明にまた冷や汗が止まらない客人が、水盤に視線を戻す。
その間、息吹は一生懸命に種を蒔き、水を与えて土まみれになりながらも、達成感に満ち溢れていた。
「終わった!どの位で咲くのかな。明日かな?」
「馬鹿、芽が出るまで何日もかかるさ」
「そおなの?ふうん、楽しみっ」
人魚と話した後、縁側で目おり正しく正座していた式神の童女が、盥に水を張って息吹を待ち構えていた。
手伝いは確かにしなかったが、どうやら晴明はきっちりとした性格らしく、息吹をひとりにはさせない。
縁側に座るとすぐに水と手ぬぐいで土まみれの手を洗ってくれて、あっという間に綺麗になった。
毎日とまではいかないが、この屋敷はよく客人が来る。
息吹も晴明以外の人をここでしか目にしないので、つい何度も盗み見をしてはそれを楽しんでいた。
「ああようやく終わった。息吹、種はもう蒔き終わったのかい?」
「うんっ。どんな花が咲くのかな、楽しみっ」
満面の笑みでぴったり隣に座った息吹につい笑みが零れる。
ひとりの生活が長いので、誰かと共に一つ屋根の下で暮らすのはどうかと考えたこともあったがーー案外、楽しいものだ。
「そなたがここへ来てからそんなに経っていないが、何かが変わった気がするねえ」
「?何が変わったの?」
「さて、何なのかな。さあ、菓子でも食べようか。おいで」
何が変わったのか?
誰が変えたのか?
その答えは、すぐそこにある。
「ああ…あの童女は私の養女となる予定の娘。何か興味でも?」
水盤の上で掌をかざしていた晴明が、何故か冷や汗をかいている客人にちらりと視線を走らせる。
烏帽子を膝に乗せた客人は、庭で花の種を蒔いている童女…息吹に目を丸くした。
「では…あの童女は人で?」
「いかにも。人ではないものを私が養女に迎えるわけがない」
…と言いつつも、晴明が数年ーー十数年経っても歳を取っていない理由をまた彼ら訳ありの客人は知っていた。
「てっきり妖かと…」
「あの娘の話はよして頂きたい。よろしいか」
少し声色を下げた晴明にまた冷や汗が止まらない客人が、水盤に視線を戻す。
その間、息吹は一生懸命に種を蒔き、水を与えて土まみれになりながらも、達成感に満ち溢れていた。
「終わった!どの位で咲くのかな。明日かな?」
「馬鹿、芽が出るまで何日もかかるさ」
「そおなの?ふうん、楽しみっ」
人魚と話した後、縁側で目おり正しく正座していた式神の童女が、盥に水を張って息吹を待ち構えていた。
手伝いは確かにしなかったが、どうやら晴明はきっちりとした性格らしく、息吹をひとりにはさせない。
縁側に座るとすぐに水と手ぬぐいで土まみれの手を洗ってくれて、あっという間に綺麗になった。
毎日とまではいかないが、この屋敷はよく客人が来る。
息吹も晴明以外の人をここでしか目にしないので、つい何度も盗み見をしてはそれを楽しんでいた。
「ああようやく終わった。息吹、種はもう蒔き終わったのかい?」
「うんっ。どんな花が咲くのかな、楽しみっ」
満面の笑みでぴったり隣に座った息吹につい笑みが零れる。
ひとりの生活が長いので、誰かと共に一つ屋根の下で暮らすのはどうかと考えたこともあったがーー案外、楽しいものだ。
「そなたがここへ来てからそんなに経っていないが、何かが変わった気がするねえ」
「?何が変わったの?」
「さて、何なのかな。さあ、菓子でも食べようか。おいで」
何が変わったのか?
誰が変えたのか?
その答えは、すぐそこにある。