主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
「晴明しゃま…晴明しゃま、起きて…」
「…ん…息吹か…どうしたんだい」
「眠れなくて…」
暗闇の中、深夜になってようやく眠りに入ろうかとした時、息吹が寝所を訪ねてきた。
半身を起き上がらせた晴明の袖をきゅっと握った息吹は、本当に心細そうにしていて晴明を何だか不安にさせる。
「どれ、一緒に寝るかい?」
「!いいの?」
そう言いながらすぐ床に潜り込んできた息吹に笑顔が戻ったので安堵した晴明は、息吹の頭を撫でた。
「あちらでは、誰かといつも一緒に寝ていたんだね?」
「うん、主しゃまと…」
「ほほう、それは興味深い。そのような男ではないのだが」
「でも…もう忘れなきゃいけないんでしょ…?」
「そうだよ。もうあれら幽玄町の者とそなたは関係ないのだから、こちらに馴染まないといけない。できるかい?」
「…はい…。寂しいけど…」
正直に寂しさを口にした息吹は、自分を引き取ってくれた晴明の恩に報いることができるように生きよう、と誓う。
この人は、命の恩人なのだから。
「これからも一緒に寝てもいい?」
「ああいいとも。いつでも来なさい」
安心したのか目がとろんとして眠った息吹の寝顔はあどけない。
ーー晴明とて無償で息吹を引き取ったわけではない。
この娘に、“何か”を感じたからだ。
それは予感ではなく直感であり、またこの先何かが起きるだろうという閃光のような衝撃でもあったのだ。
「息吹…そなたは、何者なのだ?」
囁きながら、息吹の温かい体温に急激に睡魔が襲ってくる。
「あのままではいけなかった。連れ出さなくてはと思ったのだよ、何故か…。そなたと出会ってから、次々と疑問が湧いてくるな、面白い」
美しい娘になるだろう。
妖とは無縁の世界で生きてもらいたいが、なにぶん自分も半分妖なのだから、そうもいかない。
教養と常識を。
それが備わったならば、引く手数多の求婚者が現れるだろう。
「その時、私はどう思うのかな…」
そして眠りにつく。
明日を楽しみにしながら。
明日も明後日も、ずっとーー
「…ん…息吹か…どうしたんだい」
「眠れなくて…」
暗闇の中、深夜になってようやく眠りに入ろうかとした時、息吹が寝所を訪ねてきた。
半身を起き上がらせた晴明の袖をきゅっと握った息吹は、本当に心細そうにしていて晴明を何だか不安にさせる。
「どれ、一緒に寝るかい?」
「!いいの?」
そう言いながらすぐ床に潜り込んできた息吹に笑顔が戻ったので安堵した晴明は、息吹の頭を撫でた。
「あちらでは、誰かといつも一緒に寝ていたんだね?」
「うん、主しゃまと…」
「ほほう、それは興味深い。そのような男ではないのだが」
「でも…もう忘れなきゃいけないんでしょ…?」
「そうだよ。もうあれら幽玄町の者とそなたは関係ないのだから、こちらに馴染まないといけない。できるかい?」
「…はい…。寂しいけど…」
正直に寂しさを口にした息吹は、自分を引き取ってくれた晴明の恩に報いることができるように生きよう、と誓う。
この人は、命の恩人なのだから。
「これからも一緒に寝てもいい?」
「ああいいとも。いつでも来なさい」
安心したのか目がとろんとして眠った息吹の寝顔はあどけない。
ーー晴明とて無償で息吹を引き取ったわけではない。
この娘に、“何か”を感じたからだ。
それは予感ではなく直感であり、またこの先何かが起きるだろうという閃光のような衝撃でもあったのだ。
「息吹…そなたは、何者なのだ?」
囁きながら、息吹の温かい体温に急激に睡魔が襲ってくる。
「あのままではいけなかった。連れ出さなくてはと思ったのだよ、何故か…。そなたと出会ってから、次々と疑問が湧いてくるな、面白い」
美しい娘になるだろう。
妖とは無縁の世界で生きてもらいたいが、なにぶん自分も半分妖なのだから、そうもいかない。
教養と常識を。
それが備わったならば、引く手数多の求婚者が現れるだろう。
「その時、私はどう思うのかな…」
そして眠りにつく。
明日を楽しみにしながら。
明日も明後日も、ずっとーー