主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
朔たち兄弟は、雪男を教育係として育った。

故に雪男が彼らに接する態度も馴れ馴れしくなり、言葉遣いも砕けたものになる。

朔が当主になってから、先代の百鬼だった者たちは朔と新たな契約を結び、縁を結んだ。

個々が強力な妖たちは朔の資質を認めて誓約し、毎夜百鬼夜行を行う。


「うおーい、そろそろ朧を帰らせろよ。息吹が心配するだろ」


夜も更けかかり、百鬼夜行を行う時間が近付いてくると、屋敷を守るために百鬼夜行には出ることのない雪男が庭で遊んでいた朧を指差す。


「今夜は泊める。母様たちはもう知っているから問題ない」


「はっ?誰が世話すんだよ」


「お前以外に適任が居るか?」


朔がにこっと笑うと、女の妖たちから小さな悲鳴のような歓声が上がった。

朧は猫又の尻尾と遊ぶのに夢中で、不満だと言わんばかりに唇を尖らせている雪男に気付いていない。


「最近あいつ質問ばっかしてくるから、やりにくいんだよな・・・」


「適当にはぐらかせばいいじゃないか。・・・泣かすなよ」


「おいおい、なんで俺が泣かすことになってんだよ。ああなんで山姫留守なんだよー・・・」


先代とは違って髪の短い朔は、頭に舞い落ちてきた桜の葉を払って風にさらさらの髪を泳がせながら歯を見せて笑った。


「もし万が一、朧がお前を好きになったらいびり倒すからな。覚悟しろ」


「俺があんな小娘相手にするかよ。第一俺は・・・」


「そろそろ不毛な想いは捨てろ。いい加減父様が切れるぞ」


「おっかねー」


「お前たち!行くぞ!」


朔のかけ声に百鬼たちが声を上げ、朧が手を振ると、夜空を駆け上がっていく。


「さてさて・・・どうすっかな・・・」


朧が待ってましたと言わんばかりににかっと笑った。

< 261 / 593 >

この作品をシェア

pagetop