主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
雪男の肌を素手で触ってはいけない。
もっと小さかった時に風呂上がりにうっかり雪男に抱きついてしまい、大火傷を負わせたことがあった。
地下の氷室に十日以上籠もり、あの時は恐怖と後悔で三日三晩熱を出してそれはもう家族を困らせた。
全快した雪男の一声は、“驚かせてごめんな”だった。
あれ以来、朧は雪男の白い着物の袖をいつも握るようにしていた。
「山姫が居ないから夕飯は期待しないでくれよ。俺、火は扱えないからさ」
「うん大丈夫」
家事全般、母の息吹から小さな頃から仕込まれている。
お吸い物と漬け物、おにぎりをぱぱっと作った朧は、ちゃぶ台の前で“いただきます”と手を合わせて食べ始める。
雪男は妖のため食事を摂る必要もなかったが、世話役という立場もあったので隣に座ってそれを見ていた。
「で、この後は?」
「お風呂に入って、お布団敷いて、雪男に本を読んでもらう」
「風呂以外はいいぞ」
「水風呂だったら一緒に入ってくれる?」
「まだそんな季節じゃないだろ。熱いのは無理なんだって。お前は俺を殺す気か!」
・・・すでに一度瀕死の目に遭わせたことのある朧は、お吸い物を口に運びながら頷いた。
「兄様が帰ってきたら一緒に入ってもらうから今日はいい」
「主さまはお前に弱いからなあ。疲れてんだから、あんまわがまま言うなよ」
朔はおねだりを断ったりしない。
それよりも今はこの真っ白な男に質問を。
ーー朧は赤い巾着袋から小さな帳面を取り出した。
顔がひきつる雪男に、質問開始。
もっと小さかった時に風呂上がりにうっかり雪男に抱きついてしまい、大火傷を負わせたことがあった。
地下の氷室に十日以上籠もり、あの時は恐怖と後悔で三日三晩熱を出してそれはもう家族を困らせた。
全快した雪男の一声は、“驚かせてごめんな”だった。
あれ以来、朧は雪男の白い着物の袖をいつも握るようにしていた。
「山姫が居ないから夕飯は期待しないでくれよ。俺、火は扱えないからさ」
「うん大丈夫」
家事全般、母の息吹から小さな頃から仕込まれている。
お吸い物と漬け物、おにぎりをぱぱっと作った朧は、ちゃぶ台の前で“いただきます”と手を合わせて食べ始める。
雪男は妖のため食事を摂る必要もなかったが、世話役という立場もあったので隣に座ってそれを見ていた。
「で、この後は?」
「お風呂に入って、お布団敷いて、雪男に本を読んでもらう」
「風呂以外はいいぞ」
「水風呂だったら一緒に入ってくれる?」
「まだそんな季節じゃないだろ。熱いのは無理なんだって。お前は俺を殺す気か!」
・・・すでに一度瀕死の目に遭わせたことのある朧は、お吸い物を口に運びながら頷いた。
「兄様が帰ってきたら一緒に入ってもらうから今日はいい」
「主さまはお前に弱いからなあ。疲れてんだから、あんまわがまま言うなよ」
朔はおねだりを断ったりしない。
それよりも今はこの真っ白な男に質問を。
ーー朧は赤い巾着袋から小さな帳面を取り出した。
顔がひきつる雪男に、質問開始。