主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
「好きな食べ物は?」


「冷たいもの」


「苦手なものは?」


「熱いもの」


「ここにはどれ位前から居るの?」


「先代からだな」


「好きな人は居るの?」


「お前なあ、ちゃんと布団被れって」


添い寝をせがまれたが、それを許してしまうと朧が凍死してしまうので、床の外に寝転んで添い寝まがいをしてやっていた雪男がため息。

朧の質問はいつだって最後らへんには核心に迫ろうとしているものが含まれている。


「雪男の身体に触れる人は居るの?」


「居ない。ほんの少しの間だったらいいけど、ずっとは俺が溶けてしまうしな」


真っ黒くて大きなくりくりの目が雪男をひたと見据えている。

小さな頃の息吹にうり二つの朧が自分をどう思っているか・・・今まで深く考えたことはなかったが、この末娘はそろそろ年頃を迎えるのだ。

半妖なれど鬼の成長は早く、朧の兄弟たちは比較的早く嫁や婿を取って家から出ていた。

朔が百鬼夜行の主として相応だと認めたから、安心して家を出て行ったのだ。


「じゃあずっと雪男を触れないの?私は触ってみたい」


「・・・それは無理なんだ」


「どうして?」


ーーこのまだ雛の子を勘違いさせてはいけない。


雪男は親指と人差し指で朧の額を軽く弾くと、にっと笑った。


「相思相愛の女とじゃなきゃ触れることはできないんだ」
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