主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
朧がぽかんと口を開けた。

雪男は妖の中でも自分は美形な部類に入っていることを知っていた。

・・・女は少し甘やかすとすぐ勘違いして自分に迫ってくるーー

過去に勘違いをさせて夜這いをかけられ、双方の命を脅かした経験のある雪男は、それ以来女を甘やかすことはなくなっていた。


ーー息吹以外は女をそういった目で見ることはできなくなっていた。


「お前はさあ、先代とか今の主さまとか見てるし目が肥えてるからちゃんと傍で学んでおけよ。危険な男とそうでない男の区別とかさ」


「雪男は危険なの?」


「・・・まあ、俺が迫れば大抵の女は落ちる気がする」


「父様や兄様は危険じゃないよ」


「馬鹿かお前は。先代なんか息吹と出会うまでは女遊びすごかったんだからな」


「ふうん・・・」


父は今でも母にぞっこんな気がするが・・・


何かとはぐらかそうとする雪男の真っ青でさらさらの髪に少し触れてみた。

髪は冷たくなく、ここなら雪男を火傷させないと分かった朧は、少し半開きのきれいな唇に見入りながら一番聞いてみたい問いを直球で投げた。


「今でも母様を好きなの?」


雪男は無言のまま微笑んでいたが、聡い朧はそれで全て理解して、目を閉じた。
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