主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
それから一週間が経ったというのに、晴明は主さまの屋敷に顔を出すことがなかった。
いつも晴明の世話をしていた山姫としては、やることが1つ無くなって楽になったはずなのだが…気分が晴れない。
「主さま…ちょっといいですか?」
まだ昼――眠っている主さまを起こすのにものすごく努力が要ったが、背に腹は代えられない。
晴明がここに寄り付かなくなった原因を知るためには、主さまに事情を聴くのが1番早い。
「…なんだ」
中から声だけがしたので、山姫はその声を聴き逃すまいと主さまの部屋に通じる障子に顔をくっつける勢いで中に話しかけた。
「晴明は…元気にしているでしょうか」
「…知らん。気になるならば見に行ったらどうだ」
「べ、別に気になんかしてませんからね。あの子がちゃんと食べてるのかちょっと心配になっただけです。…主さま…晴明がここを出て行った理由を知ってるんですね?」
しばらく沈黙した後、眠たそうな顔をした主さまが縁側に出て来た。
怒らせると手の付けようがなくなる短気な主さまだったが、側近中の側近の山姫には幾分態度を軟化させる。
いつも気丈にしている山姫が沈んでいる表情だったのを見た主さまは、縁側にだらりと横になると、まったく手入れのされていない庭を見つめて欠伸をした。
「…あれはもう成人している。妖以外との付き合いもある。あれにはあれの人生がある。できることならこちらで暮らすことなくあちらで暮らした方がいいに決まっている」
「そうでしょうか…。あの子は丁寧だけど毒舌だし、ちゃんとした人付き合いができるか心配なんですよ。…主さま…やっぱりあたしちょっと見てきます。託があったら言って下さい」
――ばたばたと準備を始めた山姫が晴明を気にかけている様子を最初は無感動に見つめていた主さまだったが、よくよく考えれば晴明は童子の頃から山姫を好いていた節があった。
山姫はただ純粋に晴明を気遣っているだけかもしれないが…この2人、そろそろ何かしら進展しそうな予感だ。
「…晴明の精根吸い尽くして殺すなよ」
そう助言をした主さまは、また大好きな惰眠を貪るために部屋へと戻って行った。
いつも晴明の世話をしていた山姫としては、やることが1つ無くなって楽になったはずなのだが…気分が晴れない。
「主さま…ちょっといいですか?」
まだ昼――眠っている主さまを起こすのにものすごく努力が要ったが、背に腹は代えられない。
晴明がここに寄り付かなくなった原因を知るためには、主さまに事情を聴くのが1番早い。
「…なんだ」
中から声だけがしたので、山姫はその声を聴き逃すまいと主さまの部屋に通じる障子に顔をくっつける勢いで中に話しかけた。
「晴明は…元気にしているでしょうか」
「…知らん。気になるならば見に行ったらどうだ」
「べ、別に気になんかしてませんからね。あの子がちゃんと食べてるのかちょっと心配になっただけです。…主さま…晴明がここを出て行った理由を知ってるんですね?」
しばらく沈黙した後、眠たそうな顔をした主さまが縁側に出て来た。
怒らせると手の付けようがなくなる短気な主さまだったが、側近中の側近の山姫には幾分態度を軟化させる。
いつも気丈にしている山姫が沈んでいる表情だったのを見た主さまは、縁側にだらりと横になると、まったく手入れのされていない庭を見つめて欠伸をした。
「…あれはもう成人している。妖以外との付き合いもある。あれにはあれの人生がある。できることならこちらで暮らすことなくあちらで暮らした方がいいに決まっている」
「そうでしょうか…。あの子は丁寧だけど毒舌だし、ちゃんとした人付き合いができるか心配なんですよ。…主さま…やっぱりあたしちょっと見てきます。託があったら言って下さい」
――ばたばたと準備を始めた山姫が晴明を気にかけている様子を最初は無感動に見つめていた主さまだったが、よくよく考えれば晴明は童子の頃から山姫を好いていた節があった。
山姫はただ純粋に晴明を気遣っているだけかもしれないが…この2人、そろそろ何かしら進展しそうな予感だ。
「…晴明の精根吸い尽くして殺すなよ」
そう助言をした主さまは、また大好きな惰眠を貪るために部屋へと戻って行った。