主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
その後銀が沈んでいたので、それを気にした若葉は大急ぎで風呂場に行って浴槽に水を張り、庭側に回り込んで窯に大量の薪を投入した。
「ぎんちゃん、疲れたんでしょ?お風呂入れてあげるから入ってからお出かけしたら?」
「…ん?何故俺が出かけると決めつけているんだ?…たまには家に居てもいいじゃないか」
「そう、なの?…ふうん、そうなんだ。ぎんちゃんお家に居るんだ」
俄かに嬉しそうな顔をした若葉に沈んだ気分が一気に晴れた銀は、耳と尻尾をぴょこぴょこ動かすと、息吹がくれた着物を入れてある風呂敷を若葉に見せた。
「じゃあ一緒に風呂に入るか。その後俺が着物を着せてやる。さ、行こう行こう」
若葉を抱っこして風呂場へ連れていくと、1人でも脚を伸ばすことさえ困難なほどに小さな浴槽に肩を竦めた。
「十六夜の所の風呂を借りに行くか?2人じゃ入れなさそうだな」
「ぎんちゃんのお膝に座るから大丈夫。ぎんちゃんとお風呂に入るのってはじめて」
「はじめてじゃないぞ。お前が赤子の頃は何度も俺が風呂に入れてやったんだ。いいからくるくる回れ」
銀が帯を外すと、心得たように若葉がくるくる回り、さっさと若葉を裸にした銀は、自らもさっさと裸になって手桶で湯を掬って若葉の頭に盛大にかけた。
「ぎんちゃん、お耳と尻尾洗ってあげる」
「なに?助平なことを言うな。お前こそ手を上げろ。耳の後ろや背中はちゃんと洗っているのか?ったく…目を離すとすぐこれだな。こら、動くな」
「ぎんちゃん、こしょばいっ。きゃーっ」
――この時はじめて若葉が楽しそうな声を上げたのを聴いた。
ますます嬉しくなった銀は、若葉を全身石鹸の泡まみれにして一緒に浴槽に飛び込んだ。
もちろん狭いので若葉を膝に乗せる格好になったが、家を留守にしている間、若葉ひとりで風呂に入ったり、ひとりで食事をしたりさせていたことがとてつもなく銀の胸を締め付けた。
「若葉…寂しくはないか?俺が居なくても…平気か?」
「うん、平気。ぎんちゃんは好きなことしてていいよ。でもちゃんと帰って来てね」
「…ああ、ちゃんと帰って来るとも。そうだ、今日は1日家に居てやる。山菜取りにでも行くか」
「うんっ」
にこっと笑って頬ずりをしてきた若葉を抱きしめた銀は、その後水鉄砲をしたりくすぐり合ったりして遊んだ後、手を繋いで裏庭を歩いた。
「ぎんちゃん、疲れたんでしょ?お風呂入れてあげるから入ってからお出かけしたら?」
「…ん?何故俺が出かけると決めつけているんだ?…たまには家に居てもいいじゃないか」
「そう、なの?…ふうん、そうなんだ。ぎんちゃんお家に居るんだ」
俄かに嬉しそうな顔をした若葉に沈んだ気分が一気に晴れた銀は、耳と尻尾をぴょこぴょこ動かすと、息吹がくれた着物を入れてある風呂敷を若葉に見せた。
「じゃあ一緒に風呂に入るか。その後俺が着物を着せてやる。さ、行こう行こう」
若葉を抱っこして風呂場へ連れていくと、1人でも脚を伸ばすことさえ困難なほどに小さな浴槽に肩を竦めた。
「十六夜の所の風呂を借りに行くか?2人じゃ入れなさそうだな」
「ぎんちゃんのお膝に座るから大丈夫。ぎんちゃんとお風呂に入るのってはじめて」
「はじめてじゃないぞ。お前が赤子の頃は何度も俺が風呂に入れてやったんだ。いいからくるくる回れ」
銀が帯を外すと、心得たように若葉がくるくる回り、さっさと若葉を裸にした銀は、自らもさっさと裸になって手桶で湯を掬って若葉の頭に盛大にかけた。
「ぎんちゃん、お耳と尻尾洗ってあげる」
「なに?助平なことを言うな。お前こそ手を上げろ。耳の後ろや背中はちゃんと洗っているのか?ったく…目を離すとすぐこれだな。こら、動くな」
「ぎんちゃん、こしょばいっ。きゃーっ」
――この時はじめて若葉が楽しそうな声を上げたのを聴いた。
ますます嬉しくなった銀は、若葉を全身石鹸の泡まみれにして一緒に浴槽に飛び込んだ。
もちろん狭いので若葉を膝に乗せる格好になったが、家を留守にしている間、若葉ひとりで風呂に入ったり、ひとりで食事をしたりさせていたことがとてつもなく銀の胸を締め付けた。
「若葉…寂しくはないか?俺が居なくても…平気か?」
「うん、平気。ぎんちゃんは好きなことしてていいよ。でもちゃんと帰って来てね」
「…ああ、ちゃんと帰って来るとも。そうだ、今日は1日家に居てやる。山菜取りにでも行くか」
「うんっ」
にこっと笑って頬ずりをしてきた若葉を抱きしめた銀は、その後水鉄砲をしたりくすぐり合ったりして遊んだ後、手を繋いで裏庭を歩いた。