ほし
Prologue
まりの方が、先だった。
生まれたのは先だった。
春生まれの、まり。
あいつは、冬生まれ。
なのに、
どうして、
何にも敵わないんだろう。
女である、まりなんかよりも百二十倍も美しい、綺麗な顔をして、運動も、勉強も、あいつは何でもできる。
正に、天才。
ウイットに富み、誰からも羨望と嫉妬、尊敬の眼差しを受ける。
太陽を除く、全天一の輝きを放つ恒星―――シリウスと同じ名をもつ非凡な人。
誰よりも、次期トップに相応しい人。
そのくせ、家に反発する。
ずるい。
自分の才能を、
類い稀なその才能を、
持っているくせに、
それを使おうとしない。
どれだけ望んでも手に入らない人もいるというのに。
まりは、二等星。
一等星に、あと一歩のところでなれなかった二等星。
星座でいえば、同じなのに、あなたとまりでは全然違う。
一等星の中でも一の輝きを放つあなたと、一等星に僅か届かなかった憐れな二等星のまり。
その通り、笑える。
まりは、アダーラ。
あと少しで一等星になれた、という不遇の星。
今日もシリウスの輝きの陰に押され控えめに、申し訳ない程度に光っている。