バイナリー・ハート 番外編


「オレは男の生理機能を忠実に再現して、実装しただけです。この身体は男なんだから当然です」


 ロイドを睨みながら即座に反論したランシュは、一呼吸置いて顔を背けた。
 そして言いにくそうに小声で漏らす。


「それに、いつか恋人が出来た時、彼女の想いに応えられないとしたら辛いじゃないですか。そりゃあ、それだけが愛情表現じゃないとは思いますけど……」


 やはりそうかと納得し、ロイドは不敵の笑みを浮かべた。


「語るに落ちたな。”いつか”って事は、おまえその機能を使った事がないだろう」
「え、そ、それは……」


 いつもは、ああ言えばこう言うランシュが、珍しく言い淀む。
 激しい心の動揺が、人工知能に混乱を引き起こし、言葉が出て来ないようだ。

 その、うろたえぶりから確信を得たロイドは、笑いながらランシュの頭をクシャクシャと撫でた。

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