バイナリー・ハート 番外編
「あぁ! その手があったか」
突然ランシュは、名案を思い付いたように手を打った。
そして、ニッコリ笑いながら物語を語る。
「夫に先立たれて悲しみに暮れる未亡人を、密かに想い続けていた青年が親身になって慰める。その優しさにいつしか未亡人の悲しみは和らぎ、次第に青年に心を開いていく。やがて二人は悲しみを乗り越えて、堅い愛情で結ばれハッピーエンド。ってよくあるラブロマンスですよね」
「実は横恋慕していた青年が、未亡人を手に入れるために、夫を死に追いやった張本人だったというオチか?」
「サスペンスホラーにしないでください」
そう言った後ランシュは、意味ありげに目を細めて続けた。
「オレにはせっかく絶対命令がないんだから、寿命を設定する前に気付けばよかったな」
背筋に冷たいものを感じて、ロイドは息を飲む。