バイナリー・ハート 番外編
色々と病院を当たってみたが、皆一様に人工子宮に移す事を勧めた。
自然分娩にこだわる意味が分からないと。
ロイドにしても意味は分からないが、頑固なユイの意思を曲げさせる方が困難なのだ。
ラフルールから遠く離れた田舎町には、対応できる病院があったが、あまりにも遠すぎる。
局長のロイドが、私事で何日も局を留守にするわけにもいかない。
かといって、クランベールの勝手が分からないユイの両親やソータに付き添いを頼んでも不安なので、ユイの提案で実家に帰る事になった。
ニッポンの産婦人科医院は、どこでも対応できるらしい。
人工子宮などないという。
挨拶のキスを終えると、ユイは目ざとくロイドの持った鉢植えに興味を示した。
「黄色い木苺だ。珍しいだろう」
そう言って差し出すと、ユイは目を輝かせて受け取った木苺を見つめた。