バイナリー・ハート 番外編
「ホント。かわいい。これ、私にくれるの?」
「あぁ」
「ありがとう。明日、庭に植えるわね」
ユイはラッピングされた鉢植えを抱いて、嬉しそうに笑った。
想像以上の好反応に、ロイドもすっかり気をよくする。
一旦二階に上がり、荷物を置いて再び一階に戻って来ると、食卓の上にはいつもより豪勢な料理が並んでいた。
そして食卓の中央には、赤いソースで”2”と書かれた、巨大なケーキが鎮座していた。
それを目にしたロイドは、その時初めて、ユイが早く帰ってきてと言った理由を悟った。
今日はユイが定めた結婚記念日だった。
ラフルールの役所に届けを出して、正式に結婚したのはランシュがやって来た頃だが、ユイはニッポンで結婚式を挙げた日を結婚記念日だと決めている。
数ヶ月のズレがあるので、去年はすっかり忘れていて、不機嫌にさせてしまった。
今年もあやうく、不機嫌にさせてしまうところだった事は黙っておこう。