バイナリー・ハート 番外編
先ほど木苺の鉢植えに想像以上の好反応を示したのは、記念日の贈り物だと思ったからだろう。
たまたま目について買ってきた事も、黙っておく事にする。
ロイドが席に着くと、ユイは照明を暗くして、ケーキに二本の細いローソクを立てた。
ロイドがそれに火を点ける。
二人の周りを、オレンジ色の柔らかい光が包んだ。
ローソクの炎の向こうで、ユイが微笑みながらグラスを掲げた。
「二人の結婚記念日に乾杯。これからもよろしくね」
「あぁ。こちらこそよろしく」
互いに笑みを交わして、グラスを傾ける。
そしてそれぞれ一本ずつ、ローソクの炎を吹き消した。
照明を元に戻し、いつものように食事を始める。
「ランシュがいなくてもよかったのか?」