バイナリー・ハート 番外編


 ロイドが尋ねると、ユイは少し気まずそうに苦笑した。


「うーん。本当はいて欲しかったんだけど、もしかしたら気を遣わせちゃったのかなって……」


 ランシュは今日が結婚記念日だと知っていたらしい。

 数日前からユイが少し浮かれ気味で、やたらとロイドの仕事の状態を尋ねたりしていたからだ。
 ロイドにはユイが浮かれている事は分からなかったが、ランシュはセンサで心理状態を察知しただろう。
 どうして浮かれているのか訊かれたので答えたという。


「夕方に連絡があった時、オレの事は気にしないで久しぶりに二人きりの時間を楽しんでねって言ってたの」


 ロイドも帰り際に同じ事を言われた。
 案外、副局長に補佐を頼まれたというのも、方便だったのかも知れない。

 思わず頬が緩む。
 二人とも騙されたフリをしていようと、示し合わせた。

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