バイナリー・ハート 番外編
食事を終え、二人で後片付けを済ませ、リビングに移動する。
ソファに座ると、ユイは鉢植えの木苺を観察し始めた。
黄色い実は、まだ一つしか実っていない。
他は花びらを落としたばかりの青い実か、白い花ばかりだった。
「たくさん花が咲いてるから、いっぱい実が付くといいわね。どんな味がするんだろう」
「食ってみればいいだろう」
「え? だって一つしかないし。半分こする?」
「そんな小さいもの半分にしたら味が分からなくなるぞ。オレはいいから、おまえが食え」
「うん。じゃあ、食べてみる」
ユイは慎重に木苺の実を枝から外し、嬉しそうに口に放り込んだ。
「あ、甘酸っぱい。でもラズベリーみたいに独特な風味がなくて、私、こっちの方が好きかも」
益々嬉しそうに笑うユイを見て、ロイドも少し興味が湧いてきた。
「オレにも味見させろ」
ユイを抱き寄せ口づける。
口の中に少しだけ、甘酸っぱい木苺の味が広がった。
ユイが身重なので、キスだけというのは物足りない気もするが、せっかくランシュがくれた時間だ。
彼の厚意に甘えて、今夜は新婚の時のように、二人きりの時間を存分に楽しもうとロイドは思った。
(完)