バイナリー・ハート 番外編
「あなたが何も感じないって言うから、敏感なユイに確かめてもらってたんじゃないですか」
「男に囁かれて感じるわけないだろう」
当然だとばかりに言い切るロイドに、ランシュは肩を落としてため息を漏らした。
「そういう意味じゃありませんよ。何のテストだと思ってるんですか」
ランシュがロイドの監督の下、職場復帰を果たして三日が経った。
精巧なヒューマノイド・ロボットであるランシュは、見た目も言動も人間と変わらない。
ただ二点だけ、結衣に気付かれた違いがあった。
ひとつは鼓動が聞こえない事。
もうひとつは呼吸をしていない事だ。
どちらも、よほど近付かない限り気付かれる事はないし、ランシュが意識していれば問題はない。