バイナリー・ハート 番外編
たとえば医療機器で脈拍を測定されたとしても、ランシュが機器のプログラムに干渉して、ごまかす事は可能なのだ。
ロイドが言うには、人を騙すより機械を騙す方が簡単らしい。
人に近付かないように気をつけていれば済む事だが、それではランシュの交友関係が閉じられたままになる。
人と変わりなく生活するために、他の改造に先駆けて、ロイドが改良を施した。
ランシュが結衣に恋心を抱いていた事を、ロイドは本人から聞いたらしい。
だからなのか、ランシュが少しでも結衣に近付くと不機嫌になる。
ランシュ本人はというと、家族となってからはある程度吹っ切れたようで、以前のような思い詰めた様子はない。
むしろ元々ヤキモチ焼きのロイドをからかうために、わざと結衣に近付いて楽しんでいるようだ。
それはロイドにも分かっているようで、だから余計に不愉快なのだろう。
過去のわだかまりも解消し、二人の間に妙な緊張感もなく、会話も以前より増えてきた。
ランシュが免職になるまでの二人は、本来こんな感じだったのかもしれないと結衣は思った。