バイナリー・ハート 番外編


 ユイは感情の変化が、すぐ顔に出る。
 それを証明するように脳内で分泌される物質も、めまぐるしく変化する。

 先ほどは怒りや不快を表すノルアドレナリン値が上昇した。
 今はセロトニンが上昇している。
 怒りを鎮めるためだけではないようだ。

 微かにベータエンドルフィンやドーパミンも上昇している。
 ランシュの答に、何かを期待しているのだろうか。


「お父さんへの愛から来るお母さんの行動の意味、ランシュには分からない?」


 あの人の違法な行動が、愛する夫を蘇らせる事以外に、何かあるというのだろうか。

 反応を窺うように、ユイがランシュを見つめる。
 微かに脈拍が上昇。
 答を期待されているのが分かる。
 けれどランシュには、正解が分からなかった。
 あの人のデータが少なすぎる。

 答える事が出来ず黙り込むランシュに、それでもユイは納得したように笑った。


「分からないのは、ランシュが男の子だからかな」

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