バイナリー・ハート 番外編
相手は科学に関する法を犯した犯罪者だ。
一度は法に触れて免職になった自分が、会いに行ってもいいのだろうか。
おまけにあの人は、ランシュと繋がりのある人だ。
黙って局長である先生を見つめると、あっさり了承された。
「かまわないだろう。刑務所だし、どうせ二人きりで話す事は出来ないんだ。明日、一応局に訊いてみる」
許可が下りれば次の休みに、ユイがランシュの母だと言う、あの人に会う事になった。
ユイは再び優しく微笑んでランシュに言う。
「ランシュ、今まで一度も会った事ないんでしょ? 一度でもいいから、お母さんに会ってあげて」
会いたくないと思うほど、あの人の事を恨んだり憎んだりはしていない。
ただ記憶の片隅に埋もれてしまうほど、興味がないだけだった。
けれどユイの言った、男には分からない理由がなんなのか知りたかった。