バイナリー・ハート 番外編
(4)
朝からユイの方が、なぜかソワソワしている。
今日はあの人に会いに行く。
いらないというのに、わざわざ差し入れのお菓子まで焼いてくれた。
ユイは定休日だが、先生は仕事に出かけてしまった。
久しぶりにユイと二人きりの昼間だ。
結局いくら考えても、あの人の謎は解けなかった。
家を出る時、ユイに釘を刺された。
「お母さんによろしくね。色々と思うところはあるかもしれないけど、ちゃんと挨拶はするのよ」
「うん」
苦笑するランシュの背中をポンと叩いて、ユイは笑顔で送り出した。
相変わらず心配性だ。
自分から会いに行っておきながら、口も聞かないほど、そこまで子どもじゃない。