バイナリー・ハート 番外編
(5)
「ずっとあなたに会いたかったの。どうしてもあなたに会いたくて、私は罪を犯したの」
それほどまでに夫の死を受け入れられなかったのだろうか。
遠くを見るような彼女の目が、自分を透かしてその向こうに夫を見ているような気がしてならない。
だがそれだけではないと、ユイは言っていた。
それを知るためにここに来たのだ。
ランシュは単刀直入に尋ねた。
「あなたは、どうしてオレを作ったんですか?」
「あなたに会いたかったからよ」
にっこり微笑んで同じ事を繰り返す彼女に、少し苛つく。
「そんなに夫の死を認めたくなかったんですか?」
「そうね。認めたくなかったわ。でもそれ以上に悔しかったの」
「悔しい?」