バイナリー・ハート 番外編
(6)
ラフルールの街が夕日に染まる。
二階のバルコニーで洗濯物を取り込んでいた結衣は、ランシュが帰ってくる姿を見つけて階下へ降りた。
玄関を入ってくるランシュに声をかけると、いつものように笑って挨拶を返した。
あまりにいつもと変わらない様子なので、余計に気になる。
一体母親とどんなやり取りを交わしたのだろう。
結衣がうずうずしている様子を察したのか、ランシュがクスリと笑って口を開いた。
「母さんがユイの事、いいお母さんだって言ってたよ」
”あの人”が”母さん”に変わっている。
明らかなランシュの変化に、思わず頬が緩む。
「大先輩にそう言ってもらえるなんて光栄ね。私なんてお母さんになったばかりなのに」
何気なくお腹に手を当てると、ランシュがその上に手を重ねた。