バイナリー・ハート 番外編


 病弱だったランシュは、成長も遅れ気味だったのではないだろうか。
 体つきも中性的で実年齢よりも若干幼く見える。
 弟の蒼太が十八歳の時には、もう充分むさくるしかった。

 結衣には技術的なことは分からない。
 だが人間は身体の機能が不完全な状態で生まれてくると聞いた。

 動物の赤ちゃんは生まれてすぐに立ち上がったり、数ヶ月で親と変わらないものを食べたり出来るのに、人間は一年くらい経たないと、立つことも食べることもできない。

 もしもランシュが少しでも急速成長させられていたら、筋力や内臓の機能が普通の子ども並みには強化されて、もう少し丈夫になったのではないだろうか。

 本当のところはロイドにもよく分からないらしいが、急速成長させられた国王陛下のクローンは、オリジナルの国王よりも丈夫だったらしい。

 それに比べ不妊治療の一環として、普通に生まれ育ったクローンたちは、皆ランシュ同様病弱で、中には十歳に満たない若さで亡くなった者もいるという。

 身体を成長させるための細胞分裂を繰り返す度に、元々短い寿命をすり減らすからだろうとロイドは言う。

 培養槽での急速成長は、内臓などの機能を一切使う事なく直接細胞に栄養を与えるので、臓器や体機能への負担が少ないらしい。

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