バイナリー・ハート 番外編
皮肉にも母の愛が、かえってランシュの寿命を縮めていたということなのだろう。
それでもランシュにとって、それは救いになったに違いない。
実験動物や身代わりではなく自分自身が、母に望まれて生まれてきたのだ。
ランシュは結衣の手を取り、穏やかに微笑んだ。
「ユイが会いに行くように言ってくれたおかげで、オレが生まれてきた理由がわかった。ありがとう、ユイ」
少し力を加えてキュッと手を握った後、ランシュは結衣の頬に軽くキスをした。
「どういたしまして」
誤解が解けてよかったと結衣がホッと微笑んでいると、ランシュの後ろからぬっと腕が伸びてきた。
「こら」
「わっ」
後ろに引っ張られて、ランシュがよろめく。