バイナリー・ハート 番外編
「晩ご飯の支度しないと。あなたたちは仲良くケンカしてていいわ」
そしてそのまま台所へ向かった。
「あ、オレ手伝うよ」
「行かなくていい」
後ろから二人の声が聞こえたが、結局ロイドに引き止められたようで、ランシュは台所へは来なかった。
唯一気になっていたランシュと母親の懸案が解決し、本当に幸せな日常が戻って来た。
まだほとんど実感の湧かないお腹を、結衣はそっと撫でる。
この子が生まれてきたら、二人は奪い合って争いそうな気がする。
なんとなくそんな光景が目に浮かんだ。
それはそれで益々賑やかで楽しそうだ。
ランシュが憧れた温かい家庭。
ロイドが約束してくれた幸せな家庭。
そんな何気ない日常がずっと続けばいいと結衣は密かに願った。
(完)