バイナリー・ハート 番外編


 フェティはランシュの鼻先に、ビシリと人差し指を突きつけた。


「子どものくせに覇気がない」
「えぇ?」


 思いも寄らない事を言われ、ランシュは空気が漏れたような声を上げた。
 覇気なんかどうやったら持てるのか、こちらが聞きたいくらいだ。


「おとなしくて人当たりがよくて、いう事をよく聞くいい子だけど、あなた誰にも、何にも興味持ってないでしょ。食べる事すらどうでもよさそうだもの」


 なるほど、よく観察している。
 さすがは研究者と言うべきか。


「あなた、自分のいる環境を理解しているの?」
「してるよ」


 ここは研究施設で、自分は出来そこないの実験サンプルだ。

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