バイナリー・ハート 番外編
「学んでもオレにはそれを活かせないよ。二十歳まで生きられるかどうか分からないって言われてる。あと十年もないんだよ」
俯くランシュの頭を、フェティがサラリと撫でた。
顔を上げると、見下ろす優しい眼差しと視線がぶつかった。
フワリと花のような笑みを浮かべ、けれどキッパリとした口調でフェティは言う。
「だったら、やっぱり学びなさい。失うのが惜しいと思われるような、一角の人物になってやりなさいよ。あなたが学んで得た知識や残した功績は、あなた自身に活かす事が出来なかったとしても、ここにいる超優秀な科学者たちが存分に活かしてくれるわ」
どちらにせよ、とにかく学べと言うフェティがおかしくて、ランシュは声を上げて笑った。
彼女の言葉に憐れみは感じられない。
純粋な励ましが嬉しくて、かつて経験した事がないほど気持ちが昂ぶり笑いが止まらない。
「そんな風に笑うとこ初めて見たわ。何がおかしいの?」