バイナリー・ハート 番外編
後ろ手に扉を閉めて、フェティは苦笑しながら、取って付けたような声をかけた。
「具合はどう?」
そんな事を気にかけて来たわけじゃない事を、ランシュは知っている。
「よくないよ」
吐き捨てるように言って横向きに転がると、フェティは側までやって来た。
「そう思って、お見舞いを持ってきたわ」
そう来たか。
あらかじめ予想していたランシュの目の前に、フェティは小さな紙包みを置いた。
中身はフェティの苦手な甘いお菓子なのだろう。
誰かにお土産などをもらうたびに、フェティはこっそりランシュの部屋にやってきて、有無も言わさず置いて帰る。