バイナリー・ハート 番外編


 呆れたように言いながらも、フェティの目は優しい。


「あと少しだけ、こうしてて」
「いいわ。ゆっくり休みなさい」
「うん」


 了承の声を聞き、ランシュは安心して目を閉じた。
 首筋に当てられたフェティの手が、少しずつ温かくなっていく。

 もう片方の手で、フェティが頭を撫でた。繰り返しゆっくりと撫でられ、うっとりとしてしまう。

 薬が効き始めたのか、フェティの手のせいか、頭痛や息苦しさが次第に遠退いていった。

 すでにフェティの手は、ランシュの熱を受けて充分に温かい。
 けれどその心地よさに、ランシュはウトウトと眠りに落ちていった。



(完)

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