バイナリー・ハート 番外編


「なんだそれは?」

「上司や目上の人が権力を背景にして、部下や目下の人に無理難題を突きつけたりする嫌がらせの事よ」

「オレは嫌がらせをしているわけじゃない。メンテをする上で、こいつの機能を知っておく必要があるんだ」

「そんなの書類で確認する事だって出来るでしょ? ランシュが嫌がってるんだから、立派な嫌がらせよ」


 ユイは分かっていない。
 書類だけではなく、実物を見て触って、確認したいと思うのは、科学者なら当然の事なのだ。

 なにしろランシュの身体は、おそらく現在最高水準のヒューマノイド・ロボットだ。
 機械工学の科学者である自分が、その性能を全て知りたいと思うのは当たり前じゃないかと思う。

 思うが、ランシュを完全に人間扱いしているユイには、分かってもらえそうにない。

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