バイナリー・ハート 番外編


 半ば諦め気分で投げやりに返事をしながら、ランシュは洗浄装置の扉を開く。
 中にはすでにぎっしりと先客が詰まっていた。


「……ねぇ、これも三日前からここに入ってたの?」
「そうかもね」
「助手に片付けてもらおうとか思わなかったの?」
「みんな忙しくてそんなヒマなかったのよ」


 研究室内にある殺菌洗浄済みの器具は、あらかた使い切ってしまったのではないだろうか。

 ランシュはとりあえず洗浄装置と殺菌装置の中にある器具を戸棚に片付ける。
 空になった洗浄装置の中にシンクにある器具を詰め込んでいると、フェティがやって来た。
 そばの壁にもたれてランシュの作業を見つめる。
 手伝う気はないらしい。


「見張ってなくてもちゃんと片付けるから、作業が終わったんなら帰ってもいいよ。オレは朝までここにいるし」

「私の研究室に部外者をひとり残して私が帰るわけにはいかないわ」

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