ファントム・ブラック



冷蔵庫を開けた私は首を傾げた。

何か減ってるような気がするけど……?

振り返ったけど、猫は寝てる。
よく寝る子だから猫とは、よく言ったと感心する。

「何か食べた?」

尋ねてみたけど、返事などあるわけない。

そういえば、この猫の鳴き声を聴いたことがない。鳴けない猫? そんな猫いるのかな?
まあ、いいや。

昨日よりもご飯は多めに炊いた。お皿に入れた湯気の立った白いご飯を、猫はガツガツと食べ始める。
白いご飯が好きな猫なんて変かも。
昨日買ってきた缶詰、まだ余ってんのになぁ……

お風呂から上がって、テレビを観ながら寝る準備をしてたら思い出した。

来週の合コンに着ていく服、あるかな?

すぐにクローゼットを開けて考え込む。可奈の友達は派手めの子が多いって言ってたけど、合わせなきゃいけないのかなぁ……

初めての合コン。どんなものなのか、さっぱり分からない。

それよりも櫻井先輩と一緒に食事ができるというだけで、舞い上がってたりする。先輩でなくても、先輩の友人なら似たようなタイプの人かもしれない。

もしかすると高校の時以来、五年間の彼氏いない歴に終止符を打つ時が来たのかも……

変な期待と想像で顔が緩んでしまう。

「ねぇ、どう思う?」

猫に聞いたけど、無駄だった。


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