ファントム・ブラック
「ああ、しょーがないなぁ」
布団を跳ね除けて、カーテンに手を掛けた。そっとカーテンの隙間から、ベランダの様子を窺う。
窓ガラスには雨粒や、どこからか飛んできた枯れ葉がべっとりと張り付いている。街灯に照らされた電線が強風に煽られて、今にも切れそうなほど揺れている。
肝心の物干し竿は、ちゃんと下ろしてあった。
カーテンを閉めようとして、ふと下の方へと目を向けた。ベランダに何か落ちている。
何だろう?
まじまじ見てみると、サッカーボールぐらいの大きさの真っ黒な塊。
じっと目を凝らしたら、黒い塊がもそりと動いた。雨に濡れた黒の中に埋れているのは、二つの金色の丸いもの……
あれは、目?
金色の丸いもののすぐ下で、小さな口が開いた。赤い舌と白い歯が覗いてる。