ファントム・ブラック

洗い流してみたら、意外と艶やかな黒い毛並みが露わになった。シャンプーのCMに出てくる女優さんにも負けず劣らず。



水も滴る……なんて言うし、濡れているから余計に綺麗に見えているのかもしれない。



いやいや、ちょっと待て。
見た目は綺麗かもしれないけど、所詮は野良猫。



さっき私の可愛い手を引っ掻いたことは許すものか。



引き出しから取り出したのは、そろそろ雑巾に降格と思っていた、くたびれて肌触りの悪くなったタオル。これでもかと、ごしごしと容赦なく拭いてると、時々睨まれてるような視線をチクチクと感じる。



そんなの気にしない。
野良猫を拭くのには十分だ。



ドライヤーをオンにして一気に乾かそうとしたら、すごく迷惑そうな顔をしてる。私のシャンプーの匂いをぷんぷんさせて生意気な。




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