バージニティVirginity
玲の好みの顔をしていること。
大き過ぎず、小さ過ぎず。
派手な色合いはダメ。
それが条件で集めていた。
名前もひとつひとつ付けた。
18,9歳にもなって子どもっぽ過ぎて今考えると笑ってしまうが、当時は真剣だった。
UFOキャッチャーに欲しいクマを見つけると、わざわざ友達を付き合わせてまで取ろうとした。
「ルル、指輪がないの。佳孝に怒られちゃう。一緒に探してくれる?」
「うん、いいよ。玲ちゃん、
頑張ろう」
玲は声色を使い分けて一人芝居をし、ルルをこくん、うなづくように動かした。
ルルだけを残し、あとは元に戻すことにした。
「これはなにが入ってるんだっけ…?」
玲は縫いぐるみのビニール袋の横にあったステンドグラスの小箱を手に取った。
その箱はピンクと紫とクリアーの三色のガラスで作られた美しいもので、義姉の恵子が昔、アクセサリーでも入れてね、と言って玲にプレゼントしてくれた手作りの品だった。
綺麗な品なのにしまい込んでしまって、もったいない…
玲はそう思いながら箱を手に取り、開けてみた。
エアメイルの絵葉書が二枚と写真が二枚入っていた。
1枚の写真には、加集と玲がいた。
昔、都内で開かれた空手のトーナメント試合の会場で撮ったものだった。
「…加集さん…」
玲の胸は、懐かしさで一杯になる。
加集は空手着をきて、玲はチェックのニットを着ていた。
玲は笑っていたが、加集は腰に手をあて、喘ぐような表情をしていた。
道着は前が開いていて、加集のたくましい胸筋が覗いていた。
加集は玲が初めて心を許し、自然に接することが出来た男だった。
15年前ーーー
玲は、自分の水着姿を鏡に写してみた。
「可愛いじゃん…これ」
生まれて初めてスイミングスクールというところに足を踏み入れた志沢玲は、満足そうに頷いた。
今日、ここに来る為に、横浜のデパートで一万五千円もする競泳用の水着を買った。
爽やかなブルー地に白いプルメリアの花がプリントされたワンピース型のそれは、玲の体を少しスマートに見せてくれた。
玲は自分の体形が嫌いだった。
背もあるし、子供の頃からもっさりとした体型だった。
揚げ物や菓子パンが大好きで、食べ出すと止まらなかった。
中学生の頃は寝る前にスナック菓子を一袋食べるのが習慣だった。
特にウエストや太ももの辺りの肉がすごかった。
女子プロレスラーみたいだと口の悪いクラスの男子に言われたこともある。
「この水着なら、プロレスラーには見えないよね!」
玲は嬉しくなり、鏡に向かい、1人でニコッと笑った。
大き過ぎず、小さ過ぎず。
派手な色合いはダメ。
それが条件で集めていた。
名前もひとつひとつ付けた。
18,9歳にもなって子どもっぽ過ぎて今考えると笑ってしまうが、当時は真剣だった。
UFOキャッチャーに欲しいクマを見つけると、わざわざ友達を付き合わせてまで取ろうとした。
「ルル、指輪がないの。佳孝に怒られちゃう。一緒に探してくれる?」
「うん、いいよ。玲ちゃん、
頑張ろう」
玲は声色を使い分けて一人芝居をし、ルルをこくん、うなづくように動かした。
ルルだけを残し、あとは元に戻すことにした。
「これはなにが入ってるんだっけ…?」
玲は縫いぐるみのビニール袋の横にあったステンドグラスの小箱を手に取った。
その箱はピンクと紫とクリアーの三色のガラスで作られた美しいもので、義姉の恵子が昔、アクセサリーでも入れてね、と言って玲にプレゼントしてくれた手作りの品だった。
綺麗な品なのにしまい込んでしまって、もったいない…
玲はそう思いながら箱を手に取り、開けてみた。
エアメイルの絵葉書が二枚と写真が二枚入っていた。
1枚の写真には、加集と玲がいた。
昔、都内で開かれた空手のトーナメント試合の会場で撮ったものだった。
「…加集さん…」
玲の胸は、懐かしさで一杯になる。
加集は空手着をきて、玲はチェックのニットを着ていた。
玲は笑っていたが、加集は腰に手をあて、喘ぐような表情をしていた。
道着は前が開いていて、加集のたくましい胸筋が覗いていた。
加集は玲が初めて心を許し、自然に接することが出来た男だった。
15年前ーーー
玲は、自分の水着姿を鏡に写してみた。
「可愛いじゃん…これ」
生まれて初めてスイミングスクールというところに足を踏み入れた志沢玲は、満足そうに頷いた。
今日、ここに来る為に、横浜のデパートで一万五千円もする競泳用の水着を買った。
爽やかなブルー地に白いプルメリアの花がプリントされたワンピース型のそれは、玲の体を少しスマートに見せてくれた。
玲は自分の体形が嫌いだった。
背もあるし、子供の頃からもっさりとした体型だった。
揚げ物や菓子パンが大好きで、食べ出すと止まらなかった。
中学生の頃は寝る前にスナック菓子を一袋食べるのが習慣だった。
特にウエストや太ももの辺りの肉がすごかった。
女子プロレスラーみたいだと口の悪いクラスの男子に言われたこともある。
「この水着なら、プロレスラーには見えないよね!」
玲は嬉しくなり、鏡に向かい、1人でニコッと笑った。