バージニティVirginity
まだ外は薄暗かった。


玲が外に出ると、寒さのあまり 耳が痛くなり、風に当たると目から自然に涙がでてきた。


集合は駅前のロータリーに朝の早朝7時。

そんなに早く?
玲が驚くと、

土曜日で出発が遅いと道路が混んじゃうからね。
加集が言った。


加集と彼の友達2人との日帰りドライブ。


玲は城ヶ崎海岸には、いったことがなかった。

何を着ればいいのか悩んだ。

可愛いスカートを買ったばかりなので、それを穿きたかったが、男の中に女が1人なのだから、パンツスタイルの方がいいだろう。

なんとなくそう思い、ベロアの濃い紫のストレッチパンツを選んだ。
それに白のニットセーターを合わせた。

そのセーターは襟ぐりが深めに開いているので、玲の首回りと顔の輪郭が綺麗に見えた。

そして、辛子色のダッフルコートを羽織る。


「よし。これで完璧!」

玲は家の全身鏡の前でいろいろポーズを取り、にっこりと笑った。
(加集さんの友達ってどんなだろう…)

楽しい一日になりそうだという浮き立つ気持ちと、少しの不安を抱え、白い息を吐きながら駅まで急いだ。


待ち合わせ場所の駅前のロータリーには時間ぴったりに着いた。


ーー車は、先輩から借りたんだ。
白いカローラだよ。

加集は言っていた。

探すまでもなく、ロータリーには数台のタクシーの他に白いセダンが一台停まっているだけだった。

その車のそばには、見覚えのある男が立っていた。



< 34 / 57 >

この作品をシェア

pagetop