全てを失った二人の物語
「あっれっは!!
シリウスを捕まえようとあたしなりに考えた結果で…!!!
色香は漂わせてないけど!!」
シリウスは鉄格子から離れて、頭の後ろに手をやって近くの壁に寄りかかった。
今度はあたしが鉄格子を掴む。
「そのおかげで、本当に捕まっちまったけどな。
オレは死刑だぞ?いいじゃないか、まりはもうすぐ出られるんだろ?」
「…それも、そっか」
あたしは思わずシリウスを見つめた。
話してみると、そこまで嫌な奴じゃないかも。
キ…キスしてきた時は憎たらしくて仕方がなかったけど…。
ためらった後、あたしは口を開いた。
「…シリウス、本当に死刑なの?」
「ああ、マフィアは死刑だ。
オレだって例外じゃない。
まぁ、お前の頑張り次第では、どうにでもなりそうだけどな!」
「え゙っ?
なんで、あたしの頑張り次第?」
シリウスは再び鉄格子を掴んだ。
鉄格子越しに囁きかけられ、あたしは耳を傾ける。
この声、この口調。
あたしは、なぜかそうしなければいけない気がしてきた。
「お前がトニー隊長とやらに媚売を売ればいいんだ。
あいつ絶対お前のこと……おっと
ほら、噂をすればなんとやらだ」
シリウスがにやにやしながら階段を見つめた。
あたしも振り向いて見つめていると、トニーが階段を下りてきた。
彼はあたしの牢屋の前に来るとチラッとシリウスを見て咳ばらいをし、両手を後ろに組んで喋りだした。