全てを失った二人の物語
「お前…ああ、なるほどな。
だから隊長も他の男も手を出せずにいるのか。
なるほどなー」
一人で「うんうん」と、こっちを見ながら納得するシリウスを見ないようにして、まりは考えた。
「(シリウスは間違ってる。トニーがあたしを好きなわけがない!
…でも、頼み込めば死刑からは免れるかも。だって、友達だもの)」
考えた結果、まりはシリウスの近くの鉄格子にしがみつく。
「シリウス、あたし頑張ってみる。
シリウスって何か…
最初思ってたよりいい人だし」
シリウスがあたしのいる鉄格子に近づく。
あまりの近距離に、まりはキスをした時の事を思い出し、赤面した。
「そりゃ最高のほめ言葉だな」
あたしの気持ちを知ってか知らずか、猫なで声で囁いてくるシリウス。
「成功したらオレの女にしてやる!」
「それは結構です!」
全力で否定したが、想定外にあたしの顔は笑っていた。
やっぱり、この人を助けるために頑張ろう。
あたしは本気でそう誓った。
笑い声が響いて、
夜は更けていく。
──
「─おい、起きろまり」
「─…朝?」